2015年を振り返る(2)今年のIT関連の動きについて

昨日に引き続き2015年を振り返るネタ第2弾。
今回は今年一年のIT関連の動きに関して思ったことについてまとめてみます。


1:MVNOSIMロックフリー端末

今年もMVNOSIMロックフリー端末には勢いがありました。
前者に関しては新規参入については落ち着いてきたものの、既存事業者によるサービス拡充は止まりませんでした。
相変わらずですがその状況変化の速さに情報を追いきれませんでした。
その中でも元々au回線を利用するMVNOであったmineoがドコモ回線も提供するようになり、個人向けでは初の(そして現状では唯一の)マルチキャリアMVNOになったのは大きなニュースの一つでしょう。
私個人としてはmineoのこの動きはau回線のみの提供だと端末調達の面でのデメリットが大きく、ビジネスを拡大していく上での障害となるため、その欠点を解消するべくドコモ回線も提供するようにした、というどちらかと言うと逃げの姿勢の現れだと思っているのですが、ユーザー側としては一つのユーザーIDでドコモとau両方の回線を契約し利用できる、というメリットができたわけですから、喜ぶべきことではあるのですが、何だかなぁ、という気がします。
そして昨日のエントリにも書いた通り第二のau回線利用のMVNOとして登場したUQ Mobileは登場当時はその通信パフォーマンスの高さから「通信パフォーマンスで選べばこれ一択」と言える程だったのですが、これまたビジネス的にはうまく行かなかったのかUQコミュニケーションズに事業移管され、その結果唯一のメリットと言えた混雑時の通信パフォーマンスが大幅に低下してしまったことで失われ、こうなると競争の激しいMVNOの世界で生き残るのは厳しく、このままでは危ないかも、と思ってしまいます。
結局のところau回線利用のMVNOサービスはその最大の欠点である「端末調達が基本的にau端末の白ロム頼み」を克服できない限り厳しく、既にドコモ回線利用のサービスを提供しているMVNO事業者がマルチキャリア対応のために参入、というのは有り得るでしょうが、純粋な新規参入、というのは今後ないでしょうね。
そう言えばこれまでau回線利用のMVNOではVoLTE対応端末は利用できませんでしたが、これもMVNO各社がVoLTE対応SIMを発行するようになり解決、と思ったら利用にはSIMロック解除対応のau端末のSIMロックを解除した端末が必要、というクソゴミぶりで、こんな面倒な仕様だとますますau回線利用のMVNOに客が寄り付かなくなる、と思わずにはいられません。


そして国内で販売されるSIMロックフリー端末も種類が大幅に増え、家電量販店で普通に売られる存在になりました。
価格帯もエントリークラスからハイエンドまで揃い、搭載OSもAndroidiOSだけでなくWindows Phoneも加わり、Blackberryまで技適を通った状態で売られるようになったのには驚きです。
客層もこれまでのITリテラシーの高い男性だけでなくそれ以外の層にも広がり、家電量販店のSIMロックフリー端末コーナーで子連れの女性が気になる端末について店員にあれこれ聞いているシーンを見かけることも。
今年はSIMロックフリー端末が市民権を得た一年、と言えるでしょう。
しかし国内で販売されるSIMロックフリー端末についてはいくつか言いたいことも。
まずはOSアップデートに関する懸念。
現状では日本のSIMロックフリー端末市場は中小メーカーがひしめき合っている状況で、そういったメーカーはきちんとOSアップデートまで考えた上で商品を出しているのか、というのは気になります。
いくら安くても「出しっぱなしでOSアップデートや機能追加には消極的」となると今後の市場拡大へのハードルになりかねません。
そして対応周波数バンドも基本的にドコモ回線での利用しか考えられていないものが多く、他の国内キャリア及び海外での利用では使いづらい端末が多いのもネック。
メーカーとしてはコストを抑えたい、というのがあるでしょうが、SIMロックフリー端末は特定のキャリアに縛られず利用できる端末なのですから、できるだけ多くの周波数バンドに対応しているのが理想。
最低でもLTE Band 7(2600MHz:Band 3(1800MHz)と並ぶLTE標準バンド)/28(700MHz:今後日本でも利用が進むLTEバンド)とW-CDMA Band 5/8(850/900MHz)への対応を加え、LTE Band 1/3/7/19/28、W-CDMA Band 1/5/6/8、GSMクアッドバンド対応といった仕様にしてもらいたいな、と思います。
そして最後にroot化/Bootloader Unlockできることを売りにした端末も欲しいな、と思うところ。
私が国内で販売されているSIMロックフリーAndroid端末にあまり興味がない最大の理由がroot化/Bootloader Unlockといったカスタマイズができない端末がほとんどである、ということ。
そういう向きにはNexus端末がありますが、ハイエンド端末なので簡単には手を出せない、ということで安くてそういったことができる端末があればなぁ、と思っています。
そう言えば日本国内で売られているHTC製SIMロックフリー端末は海外版で提供されているメーカー公式Bootloader Unlockサービスは受けられるのでしょうか?
これができれば国外で開発されているカスタムROMを導入でき、すごくおもしろいことになると思うのですが…


そう言えば個人的に気になっていたSIMロックフリー端末の一つ、ZenFone 2にはガッカリでした。
上位モデル(64GBストレージ、4GB RAM)がUS$299というコストパフォーマンスが売りの端末でしたが、日本版は同じものが税抜で5万円、というボッタクリ価格で、質感も日本版の価格とはつり合っておらず、しかも前モデルZenFone 5の欠点とされた操作ボタン(戻る、ホーム、タスク切り替え)に照明が付いておらず暗いところで操作しづらい点も改善されずそのまま。
日本での販売が発表される前はスペックの高さのわりに価格が安い、ということでかなり盛り上がっていたものの、いざ価格が発表されるとあまりのボッタクリ価格にすっかり白けてしまったことを思い出します。
US$299は当時のレートで約36000円、ということで価格が1万円安ければこういった低い評価にはならなかったはずなのに、と思えてなりません。
そしてこれまた発表当初はLTE Band18対応で「au回線で利用できる」と盛り上がったものの、技適の問題で利用できない(ハードウェア的には利用できるが、TestModeでバンド設定をLTE Onlyにする必要がある)、という仕様だったのにはガッカリ、というのもありました。
あとFreetel Simpleも話題を振りまいた端末でした。
音声通話とSMSに機能を絞ったベーシックフォンで、価格も6000円程ということでそういう端末が欲しいと思っていることもあり買うつもりでいたのですが、ちょうどそのタイミングで洗濯機が壊れて買い換えるハメになったため後回しにしよう、と思っていたら初回ロットはあっという間に完売し、それをもって生産終了、ということで手に入れることができませんでした。
ところが購入したユーザーからハード/ソフト両方の面で完成度が低い、と酷評されることとなり、結局買えなくてよかったのかな、と今では思っています。
そのFreetel Simple、来年2が出るとの噂で、本当に出るのであれば今度こそは買おうかな、と思っていますが、果たしてどうなることやら。


2:Windows 10

先代のWindows 8.xが大コケしたこともあり満を持しての登場だったWindows 10。
私もTechnical Preview(TP)やInsider Preview(IP)版を導入して試してみましたが、Windows 8.xよりはマシだが、Windows 7には全く及ばないゴミ、としか言いようのないものでした。
スタートメニューの復活が大きなニュースになりましたが、その満を持して復活したスタートメニューはWindows 7までのそれとは似ても似つかない代物で、これは多くのユーザーが期待しているスタートメニューじゃないだろ、と思ったのは言うまでもありません。
そしてWindows Updateの仕様が変更になり、自動更新をOFFにできない、つまりユーザーの好きなタイミングでWindows Updateを実行することができないし、自分にとって不要な更新を除外することもできない、というゴミになってしまいました。
Windows Updateパッチを適用したらトラブル発生、といったことはこれまで何度もあったことを考えるとこのような仕様は恐ろしいとしか言いようがないのですが、マイクロソフトからすればそんなことはどうでもいいらしい。
そしてWindows 10は旧バージョンのWindows(7/8.x)からの無料バージョンアップが提供されていますが、これにもゴミ仕様が紛れ込んでいました。
勝手にバックグラウンドでバージョンアップに必要なファイルをダウンロードしたり、Windows Updateを開くとバージョンアップを促す画面が開く、といった「さっさとバージョンアップしろや」とばかりにWindows 10へのバージョンアップを強要するようなやり口を展開。
私は事前にそれについての情報を得て対策(関連するWindows Updateオプションパッチをインストールしない、既にインストールしていればアンインストールする、といった)を取っていたので実害はなかったのですが、いずれセキュリティ上必要なパッチにこのようなバージョンアップゴリ押し仕様を組み込んでくる可能性がある、と思うと本当うんざりです。
マイクロソフトはこういうことをするとユーザーの反感を買う、ということが分からないのでしょうか。
このWindows 7/8.xからの無料バージョンアップはWindows 10発売開始から1年間限定、ということになっていますが、このような強引な手法を展開している、ということは結局無料バージョンアップの提供期限はなくなる可能性が高そうです。
そう言えば同社が提供するクラウドストレージサービスOneDriveでも同じようなことがありました。
「有料最上位プラン及びOffice 365契約者はストレージ容量無制限」を謳いながら一部のヘビーユーザーが数十TB単位のファイルを保存するようになるとそれを理由に容量無制限を止めるだけでなく無料ユーザーのストレージ容量まで減らす、という愚行に出ました。
マイクロソフトのこのような行為は当然ユーザーの怒りを買い、結局既存の無料ユーザーに対しては手続きすることで現状のストレージ容量を維持できるようになりましたが、こうなるのなら最初からそんなことしなければいいのに、そしてストレージ容量無制限プランについては既にいくつものストレージ容量無制限を謳ったクラウドストレージサービスが同じように一部のヘビーユーザーによる過度な利用でサービス停止を余儀なくされたことに学ばなかったのか、と思わずにはいられません。
マイクロソフトが今後もこのようなユーザー無視の愚行を続けるのであればいずれ脱マイクロソフトを考えないといけなくなるかも知れません。
でもAppleという選択肢もないから、Linuxか…


3:音楽/動画定額サブスクリプションサービス

昨日のエントリでもGoogle Play Music定額サブスクリプションサービスを取り上げましたが、今年は音楽/動画定額サブスクリプションサービスの日本での提供開始が相次いだ一年でした。
Google Play Music以外にも音楽ではApple Music、LINE Music、AWAAmazon Prime Music、動画ではNetflixAmazon Prime Videoといったサービスが日本でも提供開始されました。
日本はこれまで定額サブスクリプションサービス(特に音楽)に関しては遅れた国でしたが、一気に世界水準まで追いついてきた、という感じがします。
余談ですがGoogle Play Music定額サブスクリプションについてはApple Music、LINE Musicといった先行して提供開始されたサービスに比べメディアでの扱いが薄いなぁ、と思ったのは気のせいでしょうか。


4:携帯料金値下げ
「携帯料金が家計の負担になっている」という安倍政権の鶴の一声で議論されることになった携帯キャリア(MNO)に対する料金値下げ要請ですが、個人的にはこんなアホな話もないな、と思ったのは言うまでもありません。
日本はまかりなりにも資本主義国家なのですから、政府が民間企業に圧力をかけて「値下げしろ」というのは本来有り得ないはずなのですが、さすがは「世界で唯一経済的に成功した社会主義国家」と言われる国だけあってそういう資本主義のルールを無視した奇行がまかり通ってしまう。
今はMVNOという格安な選択肢があるのですから、携帯料金が高い、と思うのであればそのメリット、デメリットについて自分で調べた上で納得すれば乗り換えればいいし、でもやっぱりそれでは嫌だ、というのなら諦めて高い料金を払えば済む話なのに、そういう方向へは持っていかずMNOに圧力をかけて値下げさせよう、というのはどう考えてもおかしいと言わざるを得ない。
そして携帯料金が高止まりしている原因の一つである複雑怪奇な料金プラン、端末代金の割引のために強制契約させられる有料オプションやコンテンツの問題といったところにはほとんど触れず、単に従量データ量の少ない割安なプランを新設させてお茶を濁そう、といった流れになってきているのは単に政治屋の選挙目当てのパフォーマンス、としか思えません。
個人的には端末販売と回線契約は分離させ、端末はSIMロックフリーを義務化してユーザーは自分に合った端末、回線、料金プランを選べる環境を作るのがいいと思っています。
そもそも日本はハイエンド端末しか選択肢がない、という特殊な携帯電話市場を持つ国で、車に例えれば誰もがベンツやBMW、レクサスといった高級車を乗り回している、という状況。
それが携帯料金を高くしている原因の一つといえますから、端末販売と回線契約を分離させSIMロックフリーを義務付けると当然ハイエンド端末ばかり、という販売手法は成り立たなくなりますから、必然的にエントリー、ミッドレンジの端末に対する需要が生まれ、携帯にそれ程金をかけられない、金をかけたくない人はそういった端末を選び、やっぱり最新のハイエンド端末じゃないと、という人は高くてもそれを買う、という健全な市場が生まれます。
そしてMNOは自社向け端末の調達という足枷が外れることでこれまでよりも安く回線を提供できるようになり、端末の選択肢の多様化と合わせて消費者には多様な選択肢が与えられ、自分に合った端末と回線、料金プランを組み合わせることによって携帯料金を最適化できる、というメリットが生まれます。
しかし実際にそうなると端末/回線選びが今以上に複雑化し、知識のないユーザーが困る、という意見もあるでしょうが、私からすれば「分からない、知らないというのであれば自分で調べて知る努力をしろアホ」としか言いようがないですし、そういうことをしたくない人向けに最適な端末/回線をアドバイスしてくれるコンシェルジュサービスのようなものも出てくると思います。
この政府による携帯料金値下げ要請の話は日本人の自分で努力してどうにかしよう、という意識の低さ、言い換えると他力本願志向の強さを改めて感じた問題でもあります。


5:その他
今年はキャリア端末のSIMロック解除に関するルールが整備され、これまでSIMロック解除非対応だったauSoftBankの端末もSIMロック解除できるようになりましたが、ドコモに関しては逆にこれまでよりもSIMロック解除要件が厳しくなる、というおかしな話に。
最初からSIMロックフリーを義務化していればこんなことにはならなかったのに…
そしてSIMロックフリーで単体販売されている端末よりもキャリアがSIMロックをかけて販売している端末の方が値段が高い、というおかしな現象も発生しました。
Nexus 5X/6Pのことですが、「実質価格」では安くなるとはいえ誰がキャリアから2年縛りで、しかもNexus端末を買うの、と思わずにはいられません。
Nexus端末はroot化/Bootloader Unlockが簡単な端末ですから、キャリアから購入する、というのは端末が持つポテンシャルを潰す愚行(root化/Bootloader Unlockするとキャリアの保証がなくなる上にSIMロック解除リクエスト時に問題になる可能性が)でしかないのですから。
ついでに言うと今年はキャリアが発売する端末に魅力がないものが多い一年だったな、というのも感じます。
Snapdragon 810の発熱問題もありましたし、相変わらずソニーは迷走してるし、サムスンGalaxy Note 5を日本で出さないし(私を含めGalaxy Noteシリーズの後継機を待っている人は多いはずなのに)とハイエンド端末に関しては「何だかなぁ」と思うことが多かった一年でした。
しかし今後政府による携帯料金値下げ要請により端末価格は上昇することが予想され、それを見越したミッドレンジ端末がキャリアから出てくるようになったのも今年の特徴と言えるでしょう。
最後に今年注目を集めたウェアラブル端末ですが、単にメディアが騒いだだけだったのかな、という気がします。
Apple Watchじゃんぱらに何台も並んでいるのを見た時には「事前情報に踊らされて買ったものの、結局いらない、と手放した人がよっぽど多いんだなぁ」と感じたものでした。
実際Apple Watchを身に着けている人なんて見たことないですし。
ウェアラブル端末はやはりバッテリーの持ち、充電方法が最大のネックとなっており、これらの問題をどう解決するかが今後の普及するかのカギを握っている、と言えるでしょう。


最終回となる(3)はその他雑記、時事問題に関してまとめようと思っています。