沈みゆくFirefox

私は10年以上に渡ってPC向けメインブラウザとしてFirefoxを愛用していますが(HDD内をゴソゴソしたら2005年分のデータの中に最初の正式版となる1.0のセットアップファイルがあった)、先月Firefoxがメジャーバージョンアップし、Firefox Quantumという新しい名前が与えられた新バージョンとなりました(しかしバージョンナンバーはこれまでと同じ形式を引き継いでいるため1.x上がった57.x)。

このFirefox Quantum、以前のバージョン(56.x以前)に比べ大幅に動作速度が上がったことを売りにしていますが、その代わりに以前の形式のアドオンとの互換性がなくなり、WebExtentions形式のものしか利用できなくなりました。
個人的にはFirefoxの最大の魅力は豊富なアドオンによるカスタマイズ性の高さだと思っているので、それを捨ててしまうことになるアドオンの非互換化は有り得ない、愚行だ、とその発表時に思ったのですが、結局そうなってしまいました。
Firefoxの開発元であるMozilla FoundationChromeへの対抗心を剥き出しにして高速化を最優先事項としてFirefox Quantumを開発したのでしょうが、そんなことしても勝てないのだからむしろカスタマイズ性を重視してシェアを追わず「ニッチブラウザ」として生き残る道を選んだ方がよかったのでは、と思ってしまいます。
そもそもChromeがPC向けブラウザとしてシェアを伸ばし、IEを抜いてシェア1位になった理由は単純で


Android OS標準ブラウザだから」


ChromeGoogleアカウントを介してブックマーク、閲覧履歴、開いているタブといった情報を同期できるのでスマホで見ていたサイトの続きをPCで見たり、PCでブックマークしたサイトをスマホで開いて見るといったことが可能になるためAndroidスマホを使っているのであればPCでもChromeを使うのが自然な流れですからね。
そういうこともあり私もChromeAndroid端末ではメインブラウザ、PCでは主にGoogleサービス(GmailGoogle Play Musicなど)を利用するためのサブブラウザとして利用しています。
猫も杓子もiPhoneの日本にいると信じ難いかも知れませんがAndroid端末のグローバルシェアは80%程あるので、これだけのシェアを抑えていればPC向けブラウザでもトップシェアを取って当然、というわけです。


しかしFirefoxには通常版よりも長いサポート期間を持つESR(Extended Support Release)版があり、それを利用すれば来年6月までは旧式アドオンを利用できる環境と最新のセキュリティーを両立できます。
以前からのアドオン資産を使い続けたい私はもちろん移行済。

Firefox ESRの現行バージョン(=旧式アドオンをサポートする最終バージョン)は52.x ESRとなります。
ESR版は一般的に法人向けのバージョン、と言われていますが、個人でも普通にダウンロードし利用できます。


Mozilla Firefox ウェブブラウザー ― 各国語の Firefox Extended Support Release をダウンロード ― Mozilla


とりあえずこれで来年6月までは旧式アドオンを使い続けられる環境を維持しましたが、Firefox Quantumで旧バージョン用のアドオンを使えるようにする方法についての情報を見つけたので(もちろん全ての旧式アドオンが動作するわけではなく当然自己責任)もしこれがうまくいけば来年6月以降も安心(かも)、ということで試しに通常版FirefoxをインストールしていたTV録画PC(ASUS UL20A)でバージョンアップしてそれを確認してみることに。


【Firefox】Firefox Quantum (バージョン57)で旧アドオンを使う方法【再掲】 : 0から楽しむパソコン講座のブログ


ところが私の環境ではうまくいかず、Firefox Quantum非対応のアドオンは管理画面でグレーアウトしたまま。
旧式アドオンを利用できるようにするためにabout:configで変更する項目のデフォルト値が変更済の値になっていたり、変更する必要のある項目が存在しないといったことがあったのでうまくいくわけがないのですが、私が試した時のFirefox Quantumのバージョンは57.0.2だったので、既に対策されていたのかも知れません。
とは言えたとえうまくいったとしても私が使っているFirefox Quantum対応になっていないアドオンの全てが動作するとは限らないし、その後のFirefox Quantumのバージョンアップによって潰される可能性もあるのですが…


というわけでFirefox Quantumで旧式アドオンを利用する試みは失敗し、結局TV録画PCのFirefoxもESR版に変更したのですが、旧式アドオンが利用できる最終バージョンである52.x ESRのサポート期間が終わる来年6月以降どうすべきか、というのが問題になってきます。
Firefoxオープンソースのブラウザのためそのソースコードを用いた互換ブラウザがいくつかありますが、その中には今後も旧式アドオンをサポートし続けることを謳っているものもあるので、それへの乗り換えが選択肢の一つ。
しかし本家に比べ開発、サポート体制が劣る互換ブラウザがいつまで提供を続けられるかは未知数ですし、アドオンもFirefox Quantumに対応するWebExtentions形式のものに置き換わっていくでしょうから、ずっとこの環境で使い続けられるか、という観点で考えると懸念があります。
個人的に望みたいのはMozilla Foundationが以前のアドオン資産を切り捨てたことに対するユーザーからの不満を受けて開発方針を変更し、Firefoxを動作の高速性を重視したQuantumモードと旧バージョンとの互換性を重視し、旧式アドオンをサポートするクラシックモードの2つを持つブラウザにするといった対策を取ることですが、当然中身が複雑化することによりバグや脆弱性を生みやすくなるためMozilla Foundationの限られた開発リソースを考えると無理があるので夢だろうなぁ。
もちろんChromeをメインブラウザに昇格させる、という手もありますが、個人的にはFirefoxに比べ機能的に劣るのが不満だし、Googleアカウントと紐付けて利用していることもあるのでこれはあまりやりたくない。
ということで現状では決定的な解決策がありません。
とりあえずは52.x ESRのサポート期間中はそれを利用し、その後は旧式アドオンをサポートするFirefox互換ブラウザに移行、という形になるかな、と思っています。
とは言え今後Firefox Quantum対応のアドオンが充実してきて、旧式アドオンがなくても問題ない環境になるかも知れませんが、現状でもFirefoxのアドオンは開発が長い間止まっているものが多く、それ故Firefox Quantum対応になる可能性が低かったり、そもそもFirefox Quantumに対応しないことを謳っている(つまり開発終了)アドオンもありますから、あまり期待できません。
WebExtentions形式になったことによってChromeのアドオンとの互換性が高くなったので、それにより新たなアドオン開発者が参入してきたり、Chromeからの移植アドオンが出てくるという可能性もありますが、わざわざシェアが下落傾向のブラウザ向けにアドオンを開発/移植する物好きはそれ程多くないでしょうから、こちらも期待薄。
って言うかこういう状況になり、以前からのアドオン資産を持つ既存のユーザーを満足させられる環境にならなければFirefoxのシェアは急降下し、文字通りの「ニッチブラウザ」になってしまいブラウザ界での存在感を失うことになるでしょうね。