長崎の交通系ICカード事情はカオス

過去エントリで在来線特急かもめ廃止前にもう一度乗る、つまり葬式鉄のために9月上旬に長崎に行った話をしましたが、実はもう一つの目的が。

それは2020年にサービスが終了し、廃止された長崎スマートカードの払い戻し。

残高は840円。

払い戻しの期限は2025/9/30ですし、残高がそれ程残っているわけでもないので慌てて払い戻しする必要はなかったのですが…

行きに浦上駅で特急かもめを下車したのは西九州新幹線が開通すると特急が止まらなくなるから、というのが最も大きな理由だったのですが、実はこれ絡みだったりもします。

私が持っていた長崎スマートカードは上の画像の通り長崎バス発行のものなので、長崎バスの窓口で払い戻し手続きする必要があったのですが、それなら浦上駅から徒歩5分程のところにあるココウォーク内の長崎バスターミナルの窓口で払い戻しするのが旅程的に最も都合が良かったんですよね。

長崎スマートカードの払い戻しは特に問題なく完了。

チャージ時の10%のプレミアム分が減額されて払い戻しされる、つまり払い戻し額は残高の10/11となるため(1円単位は切り上げ)、770円が戻ってきました。

 

その長崎スマートカードが廃止されたのは導入から15年以上が経過し、システムが老朽化したためリプレースが必要になったのが理由。

そこで後継の交通ICカードをどうするかという話となり、最終的にnimocaを採用する流れとなったものの長崎バスだけはそれに乗らず、自社独自の交通ICカードとしてエヌタスTカード(以下N+カードと略)を採用する事に(その後長崎バス傘下となった島原鉄道(島鉄)もnimoca陣営から離脱)。

これにより県内の公共交通事業者の中で2つの交通系ICカードが両立する状況ができてしまいました。

つまり以前は長崎スマートカードで統一されていた長崎県内の交通ICカードが…

 

長崎バス:N+カード

島鉄:非対応(N+カードへの移行が間に合わず)

上記以外の長崎県内公共交通事業者:nimoca

 

に別れ、しかもこれらに加えJR九州SUGOCAもある、というカオス状態に。

nimoca対応である事を示すステッカーを掲示する長崎電気軌道路面電車

これまたnimoca陣営の長崎県営バスのレトロ塗装のミニバス。

そしてN+カードを採用する長崎バスの車両。

長崎バスnimocaを採用せず独自の道を歩んだとは言え、全国相互利用に対応する交通系ICカード(nimocaSuicaPASMOなど)にも対応しているのでN+カードがなくても困らないというのは救いですが、長崎バス車内でN+カード以外の交通系ICカードにチャージできない、という落とし穴が(よって残高不足の場合は現金精算が必要)。

ところがN+カードはnimocaを採用する県内他公共交通事業者では利用できず、あくまで長崎バスグループ専用のカード、という位置づけ。

つまりnimocaユーザー(及び全国相互利用対応交通系ICカードユーザー)は島鉄を除く長崎県内の交通系ICカード対応の公共交通事業者全てで手持ちのカードを利用できるが、N+カードユーザーはそれができず利用できるのは長崎バスのみ、という事になります。

これでは定期券利用者など長崎バスのヘビーユーザー(高校時代の私もそうだった)に長崎スマートカード時代にはなかった不便を強いているわけで、しかもN+カードにはTカードの機能が付帯しているという余計なおまけが。

通勤、通学等で長崎バスの定期券が必要なだけなのにTカードの取得まで強いられるというのはおかしいと思うのですが…

結局のところ長崎バスのわがままのせいでユーザーが不便を強いられ振り回されている、というわけで、こうなるのはやる前から分かりそうなものなのになぜ長崎バスnimocaを採用せず、独自路線を取ったのかが謎です。

九州のバス業界のドン、西鉄バスとの関係が悪いからとか何とか言われていますが…

それ故か長崎バスの乗車口に掲示されている交通系ICカードのアクセプタンスマークのカードロゴの並びはnimocaが最後(右下)になっています。

とにかく現状ではnimoca陣営、長崎バス双方のユーザーにとって不便なので、少なくともN+カードが長崎県内のnimoca採用公共交通事業者で利用できるようになってもらいたいものです。

それでも全国相互利用ができ、旅行先などでも日常利用しているカードをそのまま利用できるnimocaよりも利便性で劣りますが…

 

上記の様々な事情を考慮すると長崎で使う交通系ICカードモバイルSuica/PASMOがベスト、という事になりそうです。

もちろん定期券を利用する必要がある、地元カードを利用する事によって得られるメリットを重視するといった事情があれば別ですが…

島鉄以外の全ての交通系ICカード対応県内公共交通事業者で利用できますし、長崎バス車内でチャージできないという欠点も登録したクレジットカード/デビットカードからのチャージで解決。

実際私も今回の長崎葬式鉄旅時の長崎市内移動はモバイルPASMOを利用しました。

長崎で利用した分のモバイルPASMO利用履歴。

意図的に長崎市内で営業する公共交通事業者、長崎バス県営バス路面電車(長崎電気軌道)全てで利用してみました。

余談ですが県営バス路面電車に乗っていると運賃箱等の仕様がnimocaの親玉西鉄バスと共通なため、長崎にいる感じがしなかったのが…

そう言えば長崎スマートカード時代からある技である路面電車の進行方向逆側の運賃箱を使ったセルフ操作によるチャージ、運賃箱が一つしかないバスにはできない芸当なので非常に便利なのですが、nimocaになっても健在でした。

 

最後に余談ですが長崎県内のnimoca採用公共交通事業者は本家西鉄とは異なるデザインのnimocaを「nagasaki nimoca」という名称で発行し販売しています。

既に本家nimocaを持っているので別に買う必要はないのですが、nagasaki nimocaでも本家西鉄の各種割引サービス(バス乗り継ぎ割引など)が利用できる(それどころか西鉄電車/バスの定期券を載せる事もできるらしい:やりませんが)、というので買ってみました。

長崎駅前の県営バスターミナルの窓口で購入したnagasaki nimoca

カードのオモテ面には眼鏡橋や蛇踊りの龍、カステラといった長崎の名所、名物をモチーフとした絵が散りばめられている長崎らしいデザイン。

西鉄バスの乗り継ぎ割引が適用される条件(最初のバスを下車後90分以内に次のバスに乗車)を満たすようnagasaki nimoca西鉄バスに乗車し、その後利用履歴を確認してみると二回目のバス乗車が「割引乗車」と表記されて70円引きになっているため、西鉄バスの乗り継ぎ割引が適用されている事が分かります。

 

これなら福岡でも問題なくnagasaki nimocaを普段使いできる、という事で今後も「長崎出身者のアイデンティティー」としてnagasaki nimocaを所有し使っていこうかなと思っています。