今頃出しても遅いよ:SIMロックフリー版iPhone

今日の夕方、Appleが日本でのSIMロックフリーiPhone 5s/5cの販売を開始しました。


アップル、SIMフリー版iPhone 5s/5cをApple Storeで販売開始 - ケータイ Watch


私がこのニュースを最初にTwitterで見かけた時にはあまりにも突然すぎて「ウソだろ」と思ったのですが、その後私のTLに流れるツイートやIT系情報サイトのニュースを見て本当の話であることを確認。
私のこのニュースに対する第一印象は「今更SIMロックフリー版を出してもな。そしてそもそもiPhoneSIMロックフリー端末としての使い勝手が悪いし」というもの。
この「SIMロックフリー端末としての使い勝手が悪い」というのは私が4年前に香港からSIMロックフリーiPhone 3GSを取り寄せて使い始めた時に気づいてエントリしていますし、その後も同じネタでエントリした際にも改めて紹介しています。


SIMロックフリーだけどちょっと変:iPhone 3GS


SIMロックフリーiPhoneを魅力的に感じ「欲しい!!」という人も多いと思いますが、しかしそういった人たちが実際にそれを購入した後その落とし穴に気づき、「SIMロックフリーなのになぜ…」「これならSIMロックフリーAndroid端末の方がよかったかも」と思うかも知れません。
日本でのSIMロックフリー版発売開始、ということでこれについての情報への需要が出てきそうな気がしたので、そのことについて新しい情報を含めて改めてエントリすることにしました。


iPhoneの基本的な挙動としてiPhoneSIMロックフリーであってもiPhone提供キャリアのSIMを挿すと、そのキャリア提供のiPhoneとして動作する」というのがあります。
これが様々な問題を引き起こす原因となるのです。
4年前のエントリではSIMロックフリーiPhone 3GSガラケー向けのSoftBank SIMを挿すとSoftBank版のiPhoneとして動作し、iPhone用のAPN設定でデータ通信を行なってしまいパケット定額を契約していても定額にならず従量課金、といったことを書きました。
これに関しては今でも同様だと思われるので、iPhone 5/5s/5c契約のSoftBank SIM以外ではこの問題が発生すると思われます。
というか個人的にはSoftBankを使い続けるよりもこの際ドコモかauMNPすることを勧めます。
SoftBankは全てに渡ってクソですから。


そして海外で現地のプリペイドSIMを購入し、それをSIMロックフリーiPhoneで使う際に起こりがちな諸問題について。
上記のようにiPhone提供キャリアのSIMを挿すとそのキャリアが提供するiPhoneとして動作する、ということはそのキャリアがポストペイド/プリペイドで異なるAPN設定を利用していたり、テザリングに制限をかけていたり(そもそもできない、とか別途手続きが必要、とか)していると、データ通信/テザリングが利用できない恐れがあります。
まずは前者のAPN設定の問題。
多くの場合はポストペイド向けのAPN設定が自動的に設定されることが多いです。
プリペイドでも同じAPN設定の場合は問題ありませんが、そうでない場合はAPN設定を再設定する必要があります。
ほとんどのキャリアではプリセットされたAPN設定の変更が可能なため、単に手間が増えるだけで大きな問題にはなりませんが、そうでないところもあります。
その場合はそのままでは一切データ通信ができない、ということになります。

左がAPN設定を変更できる場合(キャリアは香港3HK)、右ができない場合(SoftBank)。
左には「モバイルデータ通信ネットワーク」(Cellular Data Network)のボタンがあり、これをタップすることでAPN設定の変更が可能ですが、右にはそれがなく、APN設定の変更はできません。
右のようにAPN設定が変更できないキャリアのプリペイドSIMを利用したい場合は事前に接続プロファイル(mobileconfigファイル)を作成して自分のメールアドレス宛にそれを添付したメールを送信しておくか、現地でunlockit.co.nzのような接続プロファイル作成サイトを利用して接続プロファイルをダウンロード、インストールするかしないとデータ通信が利用できません。
いずれもWiFiに接続されている必要がありますから、旅先ですぐに使い始めたい、という場合には不便です。


そして後者のテザリングに関する問題。
テザリングに制限をかけているキャリアのSIMを挿し、テザリングをONにしようとすると…

このように「テザリングを有効にしたいならキャリアに連絡しろ」というエラーメッセージが出たりしますし(この時挿していたSIMはシンガポールStarHubのプリペイドSIM)、そもそも設定画面にテザリングのボタンが出てこないこともあります。
このテザリングの制限に関しては利用キャリアが制限をかけていれば挿しているSIMがたとえデータ利用が前提のデータ用SIMであっても制限がかかってしまいます。
これはかなり不便です。
しかもAPN設定の問題と異なり、それを回避する手段がないのが困りもの。
プリペイドSIMの場合キャリアショップやカスタマーサポートに問い合わせることで解決する、ということはなさそうですし、非英語圏の国であれば言葉の問題がある。
JBすれば別でしょうが、iOS7は現状ではJBできない…
ちなみにiPhoneを提供していないキャリアのSIMを挿すと、このようなことはなく普通のSIMロックフリー端末として動作しますから、データ通信もテザリングも問題なく利用可能です。
とは言えiPhoneを提供していないキャリアの場合nanoSIMを用意していない可能性が高いため、SIMカッターが必要になるでしょうが…


ということもあり、私個人としてはSIMロックフリーiPhoneを買うぐらいなら、素直にNexus 5を買った方がいいだろ、と思わずにはいられません。
SIMロックフリーAndroid端末にはこのような制限はなく「真のSIMロックフリー端末」ですから、上記のような問題は発生しようがなく、海外でも安心して利用できますからね。
価格もiPhone 5sが71800円(16GB)〜、5cが60800円(16GB)〜とNexus 5の39800円/44800円(16/32GB)に比べ断然高く、しかも端末スペックもNexus 5の方が断然上で、使い勝手もいいとなると、買う価値あるの? と言いたくなります。
iPhoneはもうオワコンですから、発売開始が遅すぎた、と思わずにはいられません。
もう2年ぐらい出てくるのが早ければ(=iPhone 4Sの頃に出ていれば)全く異なる評価になっていたでしょうね。


とは言えSIMロックフリー版の発売開始は素直に喜べる出来事ですから、これを契機に今後日本でもSIMロックフリー端末の単体販売が一般的になることを期待したいところです。
もちろんFOMAプラス/LTE Band 19対応でね。
日本でもSIMロックフリーiPhoneが提供されるようになった、ということは当然日本だけがSIMロック(国内のみ)ありのiPad Cellularモデルも完全SIMロックフリーになる、という可能性がありそうです。