5Gって結局4.9Gじゃん

2年程前の「5Gって何?」というエントリの中で「5Gって技術的には"LTE Advanced 2"的なものでしかないのでは?」といったことを書いたのですが、先日このような記事を見つけ読んでみると、私の予想が当たっていて驚き。

 

幻想の5G 技術面から見る課題と可能性 (1/4) - ITmedia ビジネスオンライン

 

それに関する部分を引用すると

5Gでは、これまでのような根本的な通信方式の変化はない。通信方式は4Gと同じOFDMのままだ。ここに複数のアンテナを同時に使うMIMOの強化や、電波に指向性をもたせるビームフォーミング、複数ユーザーの信号を重ね合わせて送るNOMAなどの技術、4Gと5Gを組み合わせて使う技術などの利用が想定されている。しかし、最大の違いは、やはりサブシックス、ミリ波といった新しい周波数を利用できるところにある。

 結局のところ5GはSub6、ミリ波といったLTEよりもはるかに広い周波数幅を取れる周波数帯を利用できるようになったことで高速化した、つまり今までとは別のところにこれまでよりはるかに太い水道管を敷設し、そこにこれまたこれまでよりはるかにデカい蛇口を付けたようなものでしかなく、全く新しい技術を用いて実現したものではない、ということになります。

そういうことであれば5Gに技術名由来の呼称がなく、世代名でしか呼ばれないのも当然ですし、それ以前にそのようなものを5Gと呼ぶべきではないでしょうね。

4.9Gとでも呼ぶべきでしょうか。

そもそも現状では5G基地局のみでは通信ができず、4G基地局と連携して通信を行う必要があるノンスタンドアロン(NSA)方式でのサービス提供なので連携する4Gが5Gの足を引っ張ってしまい本来のパフォーマンスを発揮できないケースがある上に低遅延といった本来5Gが持つメリットも活かせないただの「太い水道管を使った大量の水を流せるサービス」、つまり通信速度が速いだけのサービスでしかないのですから。

通信速度だけならキャリアアグリゲーション(CA)によって複数の周波数バンドを束ねれば4Gでもスペック上は1Gbps以上の通信速度が出せますから、5Gでなければ、ということもありませんし、そもそもモバイルでそれ程の通信速度を必要とするネットサービスもない。

(少なくとも現状では)5Gは所詮その程度のものでしかないのに、メディアが5Gによって実現するバラ色の未来がどうしたこうしたといったことをしきりに報道し、期待をやたらと煽るのには本当うんざりさせられます。

ミリ波による5G基地局のみで通信が完結するスタンドアロン(SA)方式でのサービスが開始されて始めて5Gと名乗れるものになる、と言えるものなのに…

それでも通信方式自体に革新性がないのですから真の意味での5Gではないとも言えそうですが。

 

そして現状では呆れる程カバレッジが狭く、特定の極めて狭いエリア(って言うかスポット)に行かないと5Gを掴むことができないという体たらくですし(福岡市内における楽天モバイル(MNO)よりはマシかも知れませんが…)、そのためか

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中心市街地にある大手家電量販店(ヨドバシ博多)店内ですら5Gサービスを開始した全キャリアの5Gが圏外(緊急事態宣言により臨時休業する前に撮影)。

大手家電量販店はキャリアが顧客に新しい端末/サービスをアピールするために重要な場所であり、それ故店内に基地局が設置されていたりするのですが、5Gではそういった配慮もなし。

やる気あるのか、と言いたくなります。

当然キャリアも手をこまねいているわけではなく、今後基地局を増設してカバレッジを広げていくでしょうが、極めて到達距離が短いミリ波は言うまでもなくSub6によるエリア展開も衛星通信との干渉があってなかなか難しいとのことなので、急速にカバレッジが広がる、というのも期待薄でしょうね。

ですから慌てて5G対応端末を購入したり、5G契約にしたりする必要は全くなく、現状では様子見でも全く問題ないですし、それ以前に現状では4.9Gでしかないですから、2年ぐらい待っても全く問題ないでしょう。

さすがにその頃にはミリ波+SA方式の「真の5G」サービスが始まっていて、MVNOで5Gが使えるようにもなっているでしょうからね。

 

余談ですがその5G契約においてドコモがクソなことをしてくれました。

 

NTTドコモ、5G契約では2020年5月下旬以降に3G通信に非対応に!FOMAの2026年3月末終了に向けて段階的に利用を縮小へ - S-MAX

 

5G契約にすると3Gが使えなくなるそうです。

つまり回線交換方式の音声通話が利用できなくなり、音声通話は全てVoLTEで行なうということになるわけですが、VoLTEは端末との相性があり、基本的にキャリア販売の端末でしか動作を保証しませんから昨今のキャリアフリー、端末販売と回線契約の分離の流れに反する動きですし、それ以前にこれは信頼性が高く、端末が利用キャリアの通信方式、周波数バンドに対応していさえすれば確実に利用できる回線交換方式の音声通話を捨ててしまう行為であり、「音声通話ができない携帯電話」なんて有り得ないのに何してる、としか思えません。

auは4Gの時点で既にそうなっていますが(新規参入でそもそも3Gネットワークを持たない楽天モバイル(MNO)も同様ですが)、それはauが3Gにマイナー規格のCDMA2000を採用しているためさっさと3Gを止めたい(それ故3G停波も一番早い)から、という事情があるのでまだ理解できるものの、デファクトスタンダードの3G通信規格であるW-CDMA(UMTS)を採用するドコモがそれをマネする必要はないはずですが…

同じく3GにW-CDMAを採用するSoftBankまでもがそれをマネすることがないことを望むばかりです(って言うか潰れていいよSoftBank)。

このようにキャリアが5G契約回線を強制的に3Gを利用不可にし、切り捨てようとするのであれば私としてはVoLTEがキャリア/端末依存である限り音声回線を5Gにすることはできないので、5Gを導入するのはずっと先になりそうですし、導入する際はデータ回線になるでしょうね。