糸冬:イーモバイル

SoftBankイーアクセスを買収、とのニュースが流れてきました。


ソフトバンク、イー・アクセスの完全子会社化を正式発表(Livedoorニュース)


このニュースの速報が出てすぐ「SoftBankの狙いはイーモバイルが持つLTE1800MHz(Band 3)ネットワークだな」と思いましたが、続報を見るとその通りでしたね。
iPhone 5が上記バンド対応であることもあり、イーモバイルが持つLTE/DC-HSPA+ネットワークを使って一気にLTEエリアの拡大が可能になり、auに対して優位に立てる、という算段でしょう。
福岡でも有数の繁華街である博多駅前や天神でSoftBank LTEが圏外になる場所があるぐらいですから、SoftBankにとってその解決は急務でしょうし。
そしてイーモバイルLTEネットワークへSoftBankiPhone 5からもアクセスできるようになる、ということは今後通信速度が大幅に低下することは間違いなく、これでイーモバイルLTEも終わりですね。
最近2年縛りでイーモバイルLTEを契約した人が本当かわいそうです。
それ以前にSoftBank傘下になったことでサービス水準が大幅に低下することは間違いないので、そういう意味でも選択肢ではなくなりますが。
以前にも何度かエントリしていますが、個人的にはイーモバイルLTEサービスに対しては好感を持っていただけに本当残念です。


EMobile LTEを体験してきた
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それにしてもどうせ買収されるのであればKDDIに買収されればよかったのに、と思ってしまいます。
KDDIが買収すればSoftBankにとっては大きな打撃になりますから、SoftBankにとどめを刺すこともできただろうに、と思うと本当残念です。
確かに採用通信方式(CDMA2000)を考えると無理があるのでしょうが、「ライバルキャリアにLTE1800MHzバンドを取られないため」にも買収を検討すべきだったのでは、と思います。
しかしこういったやり方はドコモやKDDIの首脳陣からは逆立ちしても出て来ないでしょうから、そういったところはさすが禿社長だなぁ、と思わずにはいられません。
ドコモとKDDIの首脳陣はそういった柔軟な考え方を持たないといずれSoftBankにやられる危険性があることを認識する必要があるでしょうね。
「悪貨は良貨を駆逐する」と言いますから。


そして既存のイーモバイルユーザー(私も:プリペイドですが…)については今後もイーモバイルブランドでのサービスは継続される(ウィルコムと同じような扱いになるのかな?)ため、すぐにサービスが利用できなくなる、といったことはないでしょうが、サービスは大幅に劣化するのは間違いありません。
言うまでもなくカスタマーサポートがクソになりますし、LTEだけでなくDC-HSPA+でも通信品質の低下が進むことになるでしょう。
恐らくSoftBankiPhone 5で利用できる1800MHz(Band 3)によるLTEサービスを拡大するために既存ユーザーがいることなどお構いなしで1700MHz(Band 9)で提供されているDC-HSPA+サービスのバンド幅を削り、それをLTEに転用する、といったことをやるでしょう。
ウィルコム買収の際にはウィルコムが持つPHS基地局を間引きし、そこに自社の3G基地局を建てる、といったことをやった前科があることを考えると当然でしょう。
バンド幅が削られるとDC-HSPA+でのサービスは提供できなくなるため、当然通信品質は低下します。
そしてこれまで以上にSoftBank Ultra Speed(自社1500MHzバンドによるDC-HSPA+サービス)のユーザーがイーモバイルDC-HSPA+ネットワークを利用することになる(これまでのメイン/サブエリアという区分けが無意味になるため)ことで回線が更に混み合う、という懸念もあります。

このようにSoftBank Ultra SpeedはSoftBank WiFiのバックボーン回線としても使われていることもありますし(というかこれ程はっきり見える場所にルーターを設置するなよ、みっともない)。
イーモバイル側からするとSoftBankの2100MHz回線へのローミングにより利用可能エリアを広げることができる可能性があるというのが唯一のメリット(音声通話サービスも提供していることも考えると、利用可能エリアの狭さは致命的でしたから)といえそうですが、「イーモバイルが持つリソースを貪り尽くすことしか考えていない」SoftBankのことですからまず有り得ないでしょう。


ここまで私は今回のSoftBankによるイーアクセス買収を批判的に書いていますが、「自社で持つネットワーク、周波数バンドが不足しているから、それを補うため他キャリアを買収する」という考え方には一理ありますから、それ自体を批判するつもりはありません。
携帯電話キャリアの買収/合併は海外では全く珍しくありませんし。
例えばオーストラリアではVodafoneと3AU(Hutchison 3 Australia)が合併し、それによりそれまでの3AUとTelstraの提携が解消された(その結果Telstraは2100MHzバンドによる3Gサービスを失った)といったことがありました。
ただ買収したのが「あの」SoftBankなのが気に入らないだけです。
逆にSoftBankをまともな企業が買収して、まともなキャリアとして復活させて欲しい、というのが本音です。
とは言えそんな企業はまず現れないでしょうし、たとえあったとしても禿社長がそれを受け入れることはないでしょうから、現状では夢物語でしかありませんが。


これによりイーモバイルが選択肢から完全に消えたことで、LTE回線の導入をどうするかを改めて考える必要が出てきましたが、auLTEスマートフォンによる展開がメインで、モバイルルーターなどのデータ端末は出て来ない、という話もあるので、さてどうするか。