Huawei E5377s-327インプレ


購入からかなり間が空いてしまいましたが、HuaweiLTE対応SIMフリーモバイルルーターE5377s-327のいいところ悪いところについてまとめてみました。
とは言え旅行や帰省といった本来の利用目的で利用する機会がまだないこともありほとんど使っていないのですが…


(Good things)
対応バンドの多彩さ
E5377s-327の対応周波数バンドはLTEが1/3/5/7/8/19/20、W-CDMAが1/2/5/8/19、GSMクアッドバンド。
以前にも書きましたがLTE Band 7と19に両対応している、というのが非常に魅力的で、これが購入の決め手になった程。
LTE Band 7(2600MHz)はBand 3(1800MHz)と並ぶLTE標準バンドであり、LTEサービスを提供している日本以外のほとんどの国で利用されているバンドであるにもかかわらず日本国内で発売されているSIMフリー端末で対応しているものは非常に少ない。
SIMフリーであるということは海外でも利用されることを考える必要があるはずなのに国際標準バンドであるLTE Band 7に非対応というのは本当いただけない。
しかしE5377s-327は日本国内(ドコモ)での利用にも海外の利用にも適した対応周波数バンドで、北米以外での利用であればほぼ問題ないと言えそうです。
とは言えLTE Band 28(700MHz APT)やTD-LTEにも対応していれば尚よかったのですが…


SIMフリー
しかしこれに関してはちょっとした問題が(詳しくは下記)…


小型軽量
最近のモバイルルーターは長時間駆動を実現するためにバッテリーが大容量化していることもありサイズが大きく重いものが多いですが、E5377s-327は今時のモバイルルーターとしては小型軽量。
とは言えこれは欠点でもあるわけで(これも詳しくは下記)…


micro/nanoSIMをアダプターなしで利用できる標準SIMスロット
E5377s-327のSIMスロットは今時珍しい標準SIM対応で、SIMアダプターを使えばmicro/nanoSIMも利用可能なためSIMサイズを気にする必要がない、というのは嬉しいところ。

しかし更にいいのはこのようにそのままmicro/nanoSIMを挿すことができるSIMスロット形状であること。
SIMアダプターを利用してSIMスロットサイズよりも小さいSIMを利用するのはSIMの抜き挿しの際にSIMアダプターが引っかかり、SIMスロットの端子を破損するといったリスクがありますが、SIMアダプターを使わないのであればそういうリスクはない。
昔から持っている標準SIMでも、最近入手したnanoSIMでもSIMサイズを変更したり、SIMアダプターを利用したりすることなく利用できるのは便利です。


メジャーなMVNO事業者のAPN設定がプリセットされている
E5377s-327に最初に挿したSIMはこの時手に入れたSo-netの0SIMなのですが(上の画像で挿してあるnanoSIMがそれ)、電源を入れるだけでパケット通信アイコンが点灯し、即データ通信が利用できるようになりました。
これはもしかしてSo-netのAPN設定がプリセットされているってこと? ということで設定画面を見てみると…

このようにSo-netを含む主要なMVNO事業者のAPN設定がプリセットされていました。
APN設定がプリセットされているMVNO事業者のSIMを利用するのであればSIMを挿し電源を入れるだけで即利用可、というのは非常に便利です。
とは言えプリセットは上の画像にあるだけなので、もう少し多いとありがたいところです。


WiFi接続設定をQRコードで表示できる

このようにWiFi接続設定をQRコードで表示する機能が付いているため、Android端末であればQRコード読み取りアプリでそれを読み取るだけでWiFi接続設定が完了する、というのは非常に便利。
余談ですがiOS端末ではQRコード読み取りアプリでWiFi接続設定を含むQRコードを読み取ってWiFi接続設定することができない、というのは不便だ…


受信感度が良好
私が日常生活で動き回るエリアにはドコモの電波状況がイマイチな場所が多いのですが、そういった場所でもE5377s-327は3Gに落ちることは少なく、LTEで接続されていることが多いのは嬉しいところ。
ドコモの電波状況が悪い場所でドコモLTE/3Gバンドフル対応のジャンクGalaxy J(SC-02F)と比較してみましたが、Galaxy Jが3Gに落ちる状況でもE5377s-327はLTE接続を維持するケースが多く、少なくともGalaxy Jよりも電波受信能力が高いようです。
しかしドコモの電波状況が悪い状況下ではちょっと気になる挙動を見せることがあるのですが(詳しくは下記)…


外部アンテナ端子がある
E5377s-327には日本国内向けモバイルルーターにはほとんど装備されていない外部アンテナ端子があります。

ここに外部アンテナを接続すると電波受信感度を更に高めることができるわけで、携帯電話の電波状況が著しく悪い実家での通信状況の改善に効果がありそうなので試してみたいところ。
その外部アンテナはeBayで探してみると日本円で2000円程で手に入るようなのですが、スペックを見てみるとLTE Band 3/7/20にしか対応しないような記載があり、それを繋ぐことでドコモの電波受信感度改善に効果があるのかは不明ですが。


バッテリー脱着可能で、少しの工夫でD25HWのバッテリーを使い回せる(ただし自己責任)
E5377s-327のバッテリーは着脱可能で、バッテリーが交換できない端末が多い昨今これだけでも大きなメリット。
そこで「もしかすると」と思い日本におけるモバイルルーターのパイオニアイーモバイルD25HWを引っ張り出してきてそのバッテリーを見てみると、バッテリー容量はE5377s-327のそれと同じ(1500mAh)でサイズは少し小さく、端子の位置をうまく合わせれば使えそう。
というわけで端子位置を合わせて隙間をプラスチック片(パンの袋の留め具(クロージャー)を切ったもの)で埋め、端子同士がきちんと接触するようにしてやるとちゃんと動作しました。

左がD25HWのバッテリーを装着したE5377s-327本体、右がE5377s-327純正バッテリーです。
しかし本来想定された利用法ではないので当然自己責任での利用となります。
あくまで予備バッテリーとしての利用に留め、バッテリー充電はD25HWか様々なサイズのバッテリーに対応するユニバーサルバッテリーチャージャーで行った方がよさそうです(後者も自己責任でしょうが)。


(Bad things)
WiFiをOFFにできない
モバイルルーターはバッテリーの節約と復帰の早さを考え使わない時はWiFiをOFFにしておいて、ネット接続が必要なときだけWiFiをONにする、という使い方をする人は私を含め多いと思います。
しかしE5377s-327はWiFiをOFFにする機能がないためこういう使い方はできません。
高速ブート機能があるためそれを使えばいい、ということでWiFiをON/OFFする機能を搭載していないのかも知れませんが、当然電源をOFF→ONするよりもWiFiをOFF→ONする方が復帰は速いのでこれはいただけない。
しかもその高速ブート機能、ON/OFFの差があまりないので存在意義が微妙…
そしてバッテリーの節約以外で意図的にWiFiをOFFにしておきたい場合にもこれでは困ります。
モバイルルーター側のWiFiをOFFにできないのであれば接続する端末側のWiFiをOFFにする必要があるのですが、端末数が多くなると面倒なことこの上ない。
個人的にはこれがE5377s-327の最大の欠点だと思っています。


SSID/接続パスワードがディスプレイに表示され消せない
最初の画像の一部にモザイクをかけてありますが、その理由はそこにSSIDと接続パスワードが表示されているため。
これはWiFi接続設定をしやすいように、という意図でしょうが、常時WiFi接続に必要な情報が表示されている、というのはそれを見ることができれば誰でもWiFi接続できてしまうわけで、セキュリティ上好ましくない。
この仕様は有り得ないので当然OFFにする設定があるだろう、と思っていましたが、設定画面のどこを見てもそんなものは存在せず、SSIDと接続パスワードが常に表示されてしまう。
これは上記のWiFiをOFFにできないことと並ぶE5377s-327の大きな欠点です。


SIMフリーなのに認識できないSIMがある
SIMフリー端末なので当然通信方式が合わない、といったことがない限り基本的にはどんなSIMでも認識できるはずですが、なぜか認識できず利用できないSIMがあるのが不満。
私の手持ちのSIMの中では3HKプリペイドSIMとUQ Mobileデータ契約SIMがそれに該当。
前者は設定でデータローミングをONにしてもSIMを認識できず、ずっと圏外のまま。
もちろんAPNをきちんと設定し、それを使う設定にしているのに…
そして後者はネットワークモードをLTE onlyに設定し、手動ネットワーク検索してもau LTEのネットワークを認識できない。

このようにドコモ、SoftBank、ワイモバイル(表示はイーモバイルですが)のLTEネットワークを検出できているのにauのそれは検出できず、当然ネットワークに接続できない。
そもそもauは3Gの通信方式がCDMA2000であることもありネットワークが特殊で、LTE対応SIMフリー端末で利用するにはネットワークモードをLTE onlyにする必要があったりと一筋縄ではいかないし、技適的にもアレなので利用できなくても許せるのですが。
とは言えSIM関係のエラー(Invalid USIMとか)は出ないので、SIMフリーであることは間違いないのですが、それなのにこういう挙動を見せるというのはどうかなぁ、と思わずにはいられません。


FOMAプラス非対応?
上にも書いたようにE5377s-327はW-CDMA Band 19には対応しているもののBand 6には非対応で、それ故か電波の弱いところではLTEから3Gに落ちず、いきなり圏外になることがある。
現在ドコモはBand 6でしかFOMAプラスを展開していないため(元々Band 19で3Gサービスが提供されている場所はほとんどありませんでしたが)、Band 19のみの対応ではFOMAプラスを掴めないのでこういうことが起こる、ということのようです。
LTEがサービスされておらず、その上FOMAプラスオンリーのエリアで試したわけではないので確証はありませんが。
これではドコモ回線にきちんと対応しているとは言えず、片手落ちな感じがします。


バッテリー容量、持ち
上に小型軽量なのはメリット、と書きましたが、それとのトレードオフがバッテリー容量が少ないことによる動作時間の短さ。
動作時間はカタログスペックで6時間と大容量バッテリーを搭載し12時間以上の動作時間を持つモバイルルーターが増えている昨今、これでは短いと言わざるを得ません。
上に書いたWiFiをOFFにできない、というのも動作時間的には不利に働きます。
ついでに言うと先日久々に電源を入れてみるとバッテリーがかなり減っていて、電源OFF状態でのバッテリーの減りが早いような気がします。
中古端末なのでバッテリーが劣化しているからかも知れませんが、その割には本体の状態が良すぎるので(工場出荷時に貼られたディスプレイ保護シートが付いたままだったし)、本体はリファービッシュ品の可能性がありそうです。


高性能、多機能ではない
最近のモバイルルーターはタッチディスプレイを搭載し、そこから操作が行えるためブラウザで設定画面を開かなくても主要な操作が可能なものが増えていますが、E5377s-327には電源ボタンとメニューボタンしかないため、本体だけで可能な操作は限られます。
そして搭載されている機能もモバイルルーターとして最低限のもので、最近の多機能なモバイルルーターに比べると劣ります。
とは言え多機能なモバイルルーターに搭載されている機能の中には「これって本当に必要なの?」と思ってしまうような機能も多いですから、そういったものがなく逆にシンプルでいい、という考え方もできます。


ACアダプターが付属しない

このようにE5377s-327の箱は非常に小さく、それ故付属するのは20cm程の短いmicroUSBケーブルのみで、ACアダプターは付属しません。
コストダウンの一環だと思われますが、やっぱりACアダプターは付属している方がいいし、microUSBケーブルももう少し長いものの方が使い勝手がいいのですが。
とは言え私としてはACアダプターにしろmicroUSBケーブルにしろ手持ちがたくさんあるので、これについては特に困ることではないですが…


箱に書いてあるQRコードが野良アプリへのリンク
箱に専用アプリのダウンロードリンクのQRコードが書かれているのですが、Android版のそれを読み取ると…

Google Playストアへのリンクではなく、Huaweiのサイトへ飛んでアプリをダウンロードするリンク、つまり野良アプリへのリンクになっています。
端末上で専用アプリのダウンロードリンクのQRコードを表示することも可能ですが、これまたHuaweiサイトへ接続する野良アプリへのリンク。
Huaweiモバイルルーターの公式アプリ(バッテリーをバカ食いしたりWiFi接続設定を壊したりするHuawei HiLink)はGoogle Playからダウンロードできるにもかかわらずなぜそこへのリンクではなく野良アプリへのリンクになっているのかは謎ですが、これだとAndroid端末の設定で提供元不明のアプリのインストールを許可しないとインストールできないわけで、これはいただけません。
このQRコードは使わず、素直にGoogle Playストアへ行ってそこからHuawei HiLinkをインストールすれば済む話ですが。
そう言えばHuawei HiLinkを(事前にNandroid Backupを取った上で)ジャンクGalaxy Jにインストールして試すつもりだったのですが、結局やってないな…
ちなみにiOSアプリのQRコードはちゃんとApple App Storeへのリンクになっています。


といったところでしょうか。
この前に持っていた(そしてドナドナした)モバイルルーターL-03Eは欠点の方が多いイマイチ端末だったことを考えれば出来のいい端末で、欠点もそれなりにあるもののメリットの方が勝るため、大きな不満はありません。
そして中古であるとはいえ8000円程で手に入れてこれだけメリットがある端末であればコストパフォーマンスの面では文句なし。
とは言えWiFiをON/OFFできない、接続設定がディスプレイ上に常時表示される、というのは大きな問題なので、これらについては早急にファームウェアアップデートで改善して欲しいところ。
そしてBand 19には対応しているのに6には対応していない、というのは今となっては意味がないですから、W-CDMA Band 6(FOMAプラス)にもきちんと対応して欲しいところです。
これに関しては技適が絡むから難しいか…


というわけでこのE5377s-327には日本国内/海外いずれでもその能力を活かせるメインモバイルルーターとして活躍してもらうことになりそうです。