印鑑とサインと電子政府

先日WBSエストニア電子政府について放送していた際にふとつぶやいたツイートがなぜかバズって、1万RT以上にもなってしまう事態が発生。


これだけ注目を集めると当然賛否両論様々な意見が寄せられ(クソリプが非常に少なかったのは幸い)、私自身もいろいろと考えさせられたことが多いのですが、そこでそれらについての私の意見をまとめてみることにしました。


一番多かった異論がこれ
「印鑑は簡単にコピーできる」とか言ってるがそんなことはない
頂いた意見にある通り手彫りの実印を印章からコピーして偽造し、金融機関の職員などのプロを騙すことは難しいでしょうが、普通の認印をコピーして素人を騙すレベルのものを作るのならそれ程難しくはないと私は思っています。
って言うか印鑑登録証明という謎な仕組みがあるのは印鑑を偽造するのが決して難しくなく、それがないとその正当性、信頼性を担保できないことの証だと思うのですが…
そもそも100円(税別)ショップでも売られているようなものが認証手段として使えてしまう、というのがおかしい。
サインの方が偽造されにくく(そんなことはない、という意見も頂きましたが)、ペンさえあればOKなので「印鑑忘れた!!」といって自宅に取りに帰るハメになるといった面倒なこともないし、何より日本以外の国ではそれでちゃんと社会が回っている。
だから日本でもサインを印鑑と同等の本人認証手段として使えるようにしろ、と思わずにはいられません。
今では印鑑が不要(サインでもOK)な各種手続き(携帯電話の契約など)も増えてきましたが、まだまだ役所関係では印鑑が必須。
印鑑を忘れたことによるトラブルは誰もが一度は経験していることのはずなのに、それは不便だ、サインでもOKになればこんな経験をすることは有り得ないのに、と思わない日本人の思考停止ぶりに呆れます。
そして外国人ならサインでOKなのに、日本人はNGというのも止めて欲しいものです。
これは明確な「日本人差別」なのですから。


そして「マイナンバーハンターイ」的な見地から電子政府化による個人情報保護やセキュリティーへの懸念を訴える意見もいくつかありました。
そういう人達に私が言いたいのは
Tカードはお持ちですか?
という一言。
政府による個人情報の収集、管理がけしからん、とか言うのならTカードなんか絶対に持てないはずだからです。
Tカードはユーザーの利用履歴、購買傾向といった情報を収集して加盟各社で共有し、それをマーケティング等のために利用する、そしてその見返りとしてユーザーにTポイントを提供するという仕組み。
ですからTカードを持っていながら政府による個人情報の収集はけしからん、マイナンバーハンターイとか言う人は民間企業が同じようなこと(というかもっとえげつないこと)をしているのにそれについてはダンマリし、むしろ「ポイントが貯まる」といって喜ぶ矛盾した考えの持ち主でしかなく、こういうバカがいることに呆れるほかありません。
そもそも6000億円と言われる巨費(もちろんそれは国民が払った税金)を投じてマイナンバーのシステムを構築しておきながら「マイナンバーハンターイ」とか言う連中のせいでそれがほとんど活用されていないことに私は腹が立ちます。
そもそも様々な行政関係の諸手続きを電子化することによる効率化、行政コストの削減というのがマイナンバー制度の目的のはずなのですが、当然そういった方向には進んでいません。
マイナンバーカードに至っては「カード情報が印字されている面をコピーして保存してはいけない」といった謎ルールのせいでIDとして使えないことが多い、という意味不明なものになっています。
運転免許を返納するとそれに代わるIDとして使えるカード(運転経歴証明書)を発行してもらえますが、そもそもマイナンバーカードがIDとして利用できればこんなものは不要で、本当バカバカしい(そして税金のムダ)としか思えないのですが、それを疑問に思う人が少ないことに驚きます。
逆にマイナンバーカード以外の身分証明書類(運転免許証、パスポートなど)はIDとして使えないようにすべきなのですが、そういう状況にはなりそうにないのが…
ついでに言うと「マイナンバーハンターイ」とか言う人達は脱税を容認している、というのが私の意見。
持っている銀行口座や証券口座、所得源の情報をマイナンバーに紐付け管理する仕組みにすれば脱税を大幅に減らせ、所得税の捕捉率が上がれば税収が増え、不要な増税も避けられるはずですから(タンス預金が増えるだけ、という意見もありますが)。
私が以前住んでいたことがあるオーストラリアにはそのようなシステムがあり、そのシステムに未だ縛られている(オーストラリアの納税者番号(Tax File Number)は一生有効なので。Tax File Numberについてはこちら)私からすればさっさとそのような制度を作ってきちんと税金を払ってない連中から税金を取り立てて増税を回避する努力をしろ、としか思えないのですが、そうならないのが本当謎です。
そうなると困る人達がたくさんいて、しかも彼らが政治的な力を持っているからでしょうね。


これに類似したことで電子政府化によるハッキング、災害時の対応等への懸念、言い換えると「アナログマンセー」的な意見もありました。
人間が作ったものである以上完璧なものは存在し得ませんからそういう懸念を抱くのは当然でしょうが、電子政府化による行政手続きの効率化、コスト削減が可能といったメリットを考慮せず、懸念ばかりを過度に煽るのってどうなの、と思わずにはいられません。
「メリット>デメリット」であるからこそそうするのであり、逆であればそもそもそんなことはしないのですから。


その他には電子政府化すると高齢者がそれについて行けない(ICカードに記録された暗証番号(PIN)を管理できないなど)とかエストニアのようなシステムは小国だから可能であり、日本のような人口の多い国ではうまくいかない、といった意見もありました。
しかしそういう言い訳をして思考停止し、世の中をいい方向に変えようとしないでいる余裕が日本にあるのでしょうか。
とにかく日本には非効率的なシステムが特に役所には多く、効率化の余地がありすぎるぐらい。
例えば確定申告はe-Taxという電子申告システムがあるにもかかわらず非常に使い勝手が悪い上に初期コストがかかる(ICカードリーダー、電子証明書等)ためそれ程使われておらず、むしろ従来の紙を使ったアナログ式の申告の方が面倒が少ない、という始末(まぁこれはケースバイケースでしょうが)。
なので個人的にはe-Taxをもっと使い勝手のいいものにしてそれをデフォルトにし、紙ベース(非電子)の申告は手数料を取るべきだと思うのですが、日本のことだからどうせ高齢者が云々とか言ってそうはならないんだろうなぁ。
日本は何でも感情論ベースで動く幼稚な国ですからね。


そうやって非効率的なシステムを変えようとせず、思考停止していつまでも古いやり方にこだわり続けた結果日本が更に没落し、最終的には滅んでしまう、という結末になる可能性が高いのですが、それでもいいのでしょうか。


などといったことを件のツイートに対して頂いた大量のリプライ、引用ツイートを読みながら思ったのでした。