SoftBankが固定電話番号にこだわる理由

先日のエントリに「SoftBankが契約時の連絡先電話番号は固定電話番号でなければならない」と固執するのには絶対に裏がある、と書きましたが、今回はその裏の理由についてまとめてみます。


以前のエントリにも書きましたが、その秘密はSoftBankのプライバシーポリシーにあります。
SoftBankのプライバシーポリシー


電気通信事業等における個人情報の取り扱いについて | ソフトバンクモバイル株式会社


そして他キャリアのプライバシーポリシー
ドコモ: 電気通信事業における個人情報の取り扱いについて
au電気通信事業分野における個人情報の取り扱い
イーモバイル個人情報の取扱いについて


そのSoftBankのプライバシーポリシーの中から特に問題と思われる部分を引用します。

2)共同利用

当社は、電気通信サービスの提供等を目的として、個人情報を以下の内容で共同利用します。

a. 当社と共同利用する者
1. 当社のグループ会社
2. ソフトバンクBB株式会社
3. ソフトバンクBB株式会社のグループ会社
4. ソフトバンクテレコム株式会社
5. ソフトバンクテレコム株式会社のグループ会社
6. ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
7. ソフトバンク・ペイメント・サービス株式会社

このようにSoftBankは個人情報の共同利用範囲が非常に広く、携帯電話事業と直接関係ないグループ内他社にも認めています。
当然他キャリアはこんなユルユルなプライバシーポリシーではありません。
特にドコモとauは厳しく、個人情報の共同利用範囲を料金徴収など事業上直接関係のあるところに限っています。
それに比べるとイーモバイルは緩いですが、SoftBankとは違い「契約時の連絡先電話番号は固定電話番号に限る」といったことはないのでまだ救われています(理由は下記)。
老舗キャリアは厳格で、新興キャリアは緩い、といった傾向があるようです。

c. 共同利用の目的

1. お客さまからのお問い合わせへの対応、共同利用者のサービスの利用に関する手続きのご案内や情報の提供等のお客さまサポート

2. 課金計算

3. 料金請求

4. マーケティング調査および分析

5. 当社および他社の商品、サービスおよびキャンペーンのご案内等
6. 情報通信業界の発展およびお客さまサービス向上に寄与する情報提供をお知らせする通知

7. 当社と共同利用者に関わる商品、サービスの提供可否判断および提供

ここで問題になるのが項目5。
つまりSoftBankのグループ会社はSoftBank携帯契約者の個人情報を使って自社サービスを売り込む営業活動ができる、ということになります。
ドコモやauのプライバシーポリシーでは当然このようなことは認められないため、起こり得ないことです。


このことを念頭に置いた上で、次に「固定電話番号がなぜいけないのか?」という点について。
全ての携帯電話には発信者の番号を表示する機能が標準で搭載されていて、携帯電話契約に標準で付帯するサービスとして無料で利用できます。
そのため「電話を受ける前に発信者の電話番号を確認し、非通知や見知らぬ電話番号だと着信を拒否する」といったことが簡単にできます。
しかし固定電話にはこれができない。
一応固定電話にも発信者番号表示機能(ナンバーディスプレイサービス)がありますが、利用するには対応する電話機が必要ですし、しかも有料。
それ故ユーザー数が少なく、誰もが利用できる機能ではありません。
つまり固定電話の場合は基本的に着信を受けてみないとどこからの電話なのかが分からない、ということになりますから、そこに悪意を持つ人間がつけ込む隙がある、というわけです。


それにSoftBankのユルユルなプライバシーポリシーが加わるとどうなるか。
SoftBankのグループ会社が自社のサービスを売り込むためにSoftBank携帯契約時に提供された固定電話番号に営業電話をかける、といったことをやる可能性がある、ということになります。
特に危険なのが契約時に「自宅に固定電話がなければ、実家の固定電話番号を」と言われて素直にそれに従ってしまった人。
PCやネットに疎い実家の家族が知らぬ間に「電話代が安くなる」とか言われて不要なネット回線契約をさせられている、といったことが起きる可能性があります。
そこまで行かなくても実家の家族から「ソフトバンクなんちゃらっていうところから電話がかかってきたけど、これって一体何?」とか言われる、といったことは十分に有り得ます。
つまりSoftBankとの契約時に実家の固定電話番号を契約書類に書いたばっかりに、実家の家族に迷惑をかけてしまう、ということになってしまうわけです。
ですからSoftBank携帯の契約時には固定電話にしろ携帯にしろ、自分自身が持っている回線の電話番号を契約書類に記入するようにしましょう。
「自宅に固定電話がなければ、実家の固定電話番号を」と言われても「家族全員が携帯を持っているので、実家の固定電話をほとんど使わなくなり、基本料がもったいないから、ということで解約した」などと言って回避しましょう。
そして上記のケースに当てはまる既存ユーザーもSoftBankショップへ行き(Web上での変更はできないので)、スタッフにそのような理由を話して連絡先電話番号を変更してもらった方がいいでしょう。
そうすれば自分自身に営業電話がかかってくることはあれども、他人に迷惑をかけることはありません。
とは言えそれ以前にSoftBankと契約しない、可能であれば解約/MNPする、というのが一番ですが。


上に書いた「固定電話が持つ問題点」ですが、これって未だに振り込め詐欺が減らない理由の一つだと思うのですが、これだけの社会問題であるにもかかわらず全くと言っていい程対策がされていない、というのは一体どうして、と思ってしまいます。
NTT東西はナンバーディスプレイサービスを無料化して、詐欺の被害に遭いやすい高齢者にナンバーディスプレイサービス対応の電話機を配布する、そしてそれの配布時に「かかってきた電話を受ける前にナンバーディスプレイの番号表示を確認し、見知らぬ番号からの着信は受けない、もし受ける場合は詐欺の可能性に警戒する」といった詐欺対策の講習をする、といったことをすれば高齢者の詐欺の被害をかなり減らせると思うのですが…
そうなってしまうと自分たちの仕事が減り、それにより予算や人員が削減されてしまう、と警察が恐れているからではないか、と穿った見方をしてしまうのは私だけでしょうか(それ故詐欺の実行犯がほとんど捕まらない)。
警察内部に内通者がいて、暴力団に捜査情報を流す、という事件が起こるぐらいですから、有り得ない話ではなさそうです。