今年7月福岡市営地下鉄がNFC Payを利用した乗車時の運賃上限を640円/日にする、いわゆるフェアキャップ(fare cap)制を導入しました。
福岡市営地下鉄、タッチ決済で1日何回乗車しても上限640円の新サービス - Impress Watch
タッチ決済による地下鉄乗車の1日最大640円(新サービス)開始について | 福岡市地下鉄
1日何回乗っても運賃は640円で打ち止めになる、という事はつまりNFC Pay対応のカードを一日乗車券のように利用できるというわけで、お盆休みに試してみました。
利用したカードは今年7月にJR九州のNFC Pay乗車を試した際と同じソニー銀行のデビットカード(VISA Contactless対応)の実カード。
注意すべき点はフェアキャップを適用するためには全ての乗車に同じカードを使う必要があり、実カードと同じカードに紐付いたGoogle Wallet(GPay)やApple Payに登録されたカードを混ぜて使ってしまうとフェアキャップが適用されないという事。
GPayやApple Payに登録されたカードは実カードとはカード番号が異なるバーチャルカードのため、別のカードと認識されるので当然ですが…
このサービス、地下鉄駅などでの告知の類が少なく、福岡市営地下鉄側からすればあまり知られたくないのでは思ってしまう程。
中洲川端駅で見かけた告知ポスター。
紙とデジタルという違いはあれども内容は同じですが…
しかしこれを利用する明確なメリットがある橋本駅にこういった掲示がなかったのが不思議です。
橋本→天神南/博多の片道運賃は340円なので往復するだけで元が取れるのですが、だからこそこれについての掲示の類がないんだろうな、と穿った見方をしてしまいましたが、単に近隣住民は以前から一日乗車券を買っていたので特に告示しなくても分かっている人は普通に使うからなんでしょうね。
今回渡辺通→橋本→櫛田神社前/中洲川端→福岡空港→西新→箱崎宮前→天神と乗車し、実運賃の合計は1800円になりましたが
デビットカードの利用履歴を見るとちゃんと640円で打ち止めになっています。
NFC Payによる公共交通機関への乗車の決済が成立するのは翌日朝である、という仕組みを上手く使ったサービスと言えそうです。
一日の積算運賃が640円を越えた時点でそれ以降の運賃加算を止め、640円で決済を確定する、という処理をすれば済む話ですからね。
福岡市営地下鉄がこのサービスを始めたのは今年7月に開催された世界水泳に絡んだインバウンド対応のためというのが表向きの理由ですが、個人的には一日乗車券についての利用者にとっては不便で、事業者としてはコストアップ要因となるある仕様を解消するため、という福岡市営地下鉄側の都合もあると思っています。
福岡市営地下鉄の一日乗車券は各駅の自動券売機で購入でき、これが一般的な購入法ですが、当日券しか購入できず支払いも現金のみというのが欠点。
そのためキャッシュレス決済で購入したい、事前購入しておきたいという場合は博多、天神、西新などにある定期券発売所で購入する必要があります。
この定期券発売所で購入できる一日乗車券、駅の自動券売機で購入できるものとは異なりテレホンカードのようなプラスチックカード。
左が定期券発売所で購入できるプラスチックカード、右が駅の自動券売機で購入できる紙の一日乗車券。
プラスチックカードだが何度も再利用される香港やシンガポールの地下鉄のきっぷとは異なり福岡市営地下鉄のプラスチックカード一日乗車券は使い捨てで、当然紙製よりもコストが高いですから事業者側からすれば発行枚数を減らしたい、と思うのは当然。
つまり利用者としてはNFC Pay対応カードをキャッシュレスの一日乗車券として利用できるためキャッシュレス決済で一日乗車券を購入するためにわざわざ定期券発売所に行く必要がなくなり(事前購入も不要になる)、福岡市営地下鉄としては高コストのプラスチックカード一日乗車券の発行枚数を減らせる(そしていずれ廃止できる)という利用者、事業者双方にメリットがある施策、というわけです。
裏事情はどうであれこれにより気軽に地下鉄であちこち回れる、というわけで今後はこのNFC Pay一日乗車券を積極的に利用していきたいと思っています。
最後に余談ですが福岡市営地下鉄も他のNFC Pay乗車サービスを提供している公共交通事業者同様Mastercardには非対応。
福岡空港、天神など一部の駅のホームドアには「AMEX Contactlessで地下鉄に乗れます」というAMEXの広告が出ていました。
Mastercard Contactless対応の住信SBIデビットカードをメイン使いしている私からすると怒りが湧いてくるような広告で、早くMastercardにも対応してくれよ、と思ったのは言うまでもありません。
そのMastercard Contactlessを使った公共交通機関への乗車、こちらのImpress Watchの記事によると「最短でも来年春、つまり来年度以降」との事で、まだ半年以上待たされるのかぁ、とがっかりさせられてしまいました。
もうしばらくJR/地下鉄に乗る際にはVISA Contactless対応カード/Google Walletを使う日々が続く事になりそうです。